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日本ウミガメ会議レポート.3

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いよいよ「おじゃり申せ日本ウミガメ会議」も最終日となりました。最終日はウミガメの研究報告のトリとなります。内容も濃く興味ある講演。朝、長浜を見学に行ったので少し遅れての参加。もう少し時間が欲しい所ですね。特に私個人として興味ある講演は京大院の奥山氏の「興奮期を過ぎた仔ガメは外洋へ行けるか?」です。未だに続く稚ガメの放流会。教育目的限定ならば多少は理解は出来ますが、あまりにもイベント化し過ぎている今。間違った認識の基に行われている「稚ガメの放流会」はウミガメの生態を無視した非科学的な根拠で行われている場合が多いようです。産卵巣から脱出した稚ガメは興奮期(フレンジー)にはいります。その活性期を利用して外洋に到達すると言われている事からその時期を外した稚ガメはほとんどが死滅すると言われています。奥山氏の講演は科学的な根拠を見出した研究報告です。

今朝は少し遅れて参加。ちょうどELNAの菅沼さんのリビングタグの講演です。
「リビングタグは有効か」タグはウミガメの外洋での生態や成長をしる上で重要な情報となる。しかし、タグはウミガメの成長と共に脱落したりする場合も多くその様な問題に組織を使ったタグの考察を行う。
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京大院:奥山氏の
「興奮期を過ぎた仔ガメは外洋へ行けるか?」
奥山氏の了解を得てこの報告を紹介致します。
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フレンジー(活性期)の過ぎた稚ガメは成長する為に外洋に行けるか?産卵巣から脱出したばかりの稚ガメは直ぐに海に向かいます。それは活性期(24時間程度)に入って一気に砂浜を脱して海に向かい、そして黒潮流れる海域まで目指す為と言われています。この稚ガメの生存に重要な時期を失った場合、果たして稚ガメは生き残れるのか?この疑問をアオウミガメの仔ガメを使い調査した結果を報告。
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調査サンプルはアオウミガメの仔ガメ、2時間前に孵化した仔ガメ(興奮期)、7日間飼育した仔ガメ(脱興奮期)、28日間飼育した仔ガメと分けて同様の条件で放流します。
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但し、放流は夜間では確認出来ない点や危険なので日中となる。アオウミガメの定位や軌道はこのような実験装置(電波テレメトリー)で追跡する。
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今回の調査項目
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脱出後1日目の仔ガメの軌跡
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飼育7日後の興奮期が過ぎた仔ガメの軌跡。波への定位が劣る傾向。
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飼育28日後の仔ガメの軌跡。既に外洋に向かう気力が無くなっている。
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上記の3例からも、違いが如実に表れている。特に波に向かって行く定位性が飼育日数の増加と共に劣っている。これは波が陸に向かって平行に届く為、仔ガメは波に垂直方向に向かう事で沖に出ることが出来る。この能力は仔ガメにとって外洋の海流になる重要な要素となる。この波への定位が失われる事は仔ガメの生存にも大きく関与する。
また実験は日中に行われており、実際の夜間では日数の経ってしまった仔ガメは浮遊傾向に陥る場合が多い。興奮期を過ぎた仔ガメは夜間では寄り、浮遊傾向に向かうと言う事が予測される。
仔ガメの移動速度にも差が生じる。
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さきほどの波の定位による、遊泳方向への影響。
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波への定位
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まとめ。この結果はアカウミガメでも仔ガメの性質差は無い事から、同様の結果と予測される。興奮期を失する事は仔ガメにとっては生存の可能性を奪う結果となる。
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現在も続けられている保護活動の一環としての「仔ガメの放流会」の問題点
1.イベントに合わせた時間・日程まで仔ガメが保留される。
 (興奮期の消失)
2.イベントに合わせて卵・稚ガメが集められる。
 (なぜウミガメはランダムに産卵地を選ぶのか本質を見失う)
3.白昼の放流は外敵にさらされてしまう。
 (なぜ夜間に脱出を行うのか生態を無視。日中は鳥や魚など外敵に見つかりやすい)
また、仔ガメの走光性に於いて海に向かった仔ガメが再度、陸の灯りに向かって来ると言う事はありえません。実際には興奮期(フレンジー)が終わった脆弱な稚ガメが沿岸流で流れ着く事はあります。これも、興奮期を過ぎた仔ガメを放流する事で起きる現象と認められます。

また、人工孵化場への卵の集約も問題が存在します。
1.ウミガメの臨界温度による性決定を偏らせる。
 (29度以下はオス、以上はメス。温度依存性決定(TSD))
2.古代からウミガメの生存が続く理由の一つに、産卵に於けるランダム性が認められる。
 (異なる環境の産卵地により、生き残りの道を選んできた)
3.人工孵化場は人の生産性向上に陥る。
 (保護と言えど人が関与し過ぎる場合は生産性が過剰になり生態の能力からかけ離れる)

以上のような点から、放流は出来るだけ早く、時間帯にも留意しながら行う必要があります。
人工孵化場より、自然の砂浜を保つ、もしくは戻す事が最善な孵化環境の構築になります。
現在、多く保護と思われている「仔ガメの放流会」や「人工孵化場への卵の集約」は実際のウミガメの生態を把握しないで、人の思い込みが優先されています。
教育観点からの放流会でも、あまりにも定期化したり、商業主義になるとウミガメの減少さの主因になってきているようです。
未だにウミガメの生態は実際には把握されている部分は少なく、ほとんどの部分が解っていません。これはウミガメは外洋で生活する為、追跡が困難を伴うからで、現在でもやっと近海での行動が解明され始めたのです。
 特に北太平洋域のアカウミガメは西日本の沿岸の砂浜でしか産卵が認められていません。言ってみれば北太平洋域のアカウミガメは日本でしか生まれないのです。ハワイやアメリカ大陸のアカウミガメもほとんどが日本生まれなのです。
その様な意味からも北太平洋域のアカウミガメを保全する事は日本に大きな責任があるのです。

参考:日本ウミガメ協議会 やめよう仔ガメの放流会

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