- 2010-05-21 (金)
- 海岸の取り組み

写真はウミガメ協議会 石原君の「アカウミガメの保全活動にみる予防原則と新たな取組み」
今日は名古屋にあるラクダ書店にてビオカフェ。
淡水ガメとウミガメのカメカメなコラボレーションでした。
愛知学泉大の矢部教授とウミガメ協議会の石原君とともにカメの保全をテーマに、淡水ガメの遺伝子汚染とウミガメの放流会などの効果について意見交換をしてきました。
予防原則についての議論が盛り上がりました。
English version

愛知学泉大の矢部教授。淡水ガメの交雑は非常にシリアスな問題であることが皆さんに理解していただけたと思います。

特にカメの持つ精子貯蔵と受精遅延能力が遺伝子汚染を一時的なものではなくしていることなど
非常に興味深い内容でした。

ウミガメの交雑個体の事例も紹介していただきました。名古屋港水族館に提供していただきました。

石原さんのお話は人工孵化場やウミガメの放流会について真剣に向かっている姿だからこその説得力ある内容だったと思います。

自由討論の最後で盛り上がった内容に関してその1部を掲載する。
淡水ガメの遺伝子汚染についての議論。(分かりやすくするため、文章を補足してあります)
<意見>:説明いただいた、交雑個体について分からない部分がある。
→生物多様性の観点からみると、植物に関しては例外があるが、通常、動物に関しては交雑個体同士で新種ができることはないということ。交雑によって生物の多様度が上がるわけではないので注意が必要。また、カメの場合は精子貯蔵と受精遅延能力によって、交雑個体が誕生するのは複数年にわたることがあることを肝に銘じなければならない。
<意見>:ミシシッピアカミミガメに関しては自然繁殖も認められているということだが、現状では年間数十万匹も輸入されていると聞いたことがある。これを止めるなり、特定外来生物に指定し、駆除を進めなければ、一向に解決に向かわないのではないか?海外からのペットの輸入を止められないか?
→輸出入に関わってくる問題だと思うが、縦割りの影響が大きく、力のない環境省が意見を言ったとしても、経済産業省などの他の省庁には効果が期待できない部分がある。
→ただし、輸入する側の人間に問題があるのであって、本来アカミミガメには罪はないことを心に留めておいてほしい。(関係省庁や輸入業者、飼い主のモラルを問う発言)
<意見>:汐川など塩水が流入している河川にもアカミミガメが見つかっているが、在来のカメに影響はないのか?
→アカミミガメの本来の生息地はミシシッピ川の河口であるため、生息可能範囲である。在来の淡水ガメとは生息域は違う。しかし、他の生物には影響がある可能性がある。
ウミガメの放流会事業についての「予防原則」。話題をまとめてみました。
(分かりやすくするため、文章を補足してあります)
<意見>:野生のウミガメが多様な環境に産卵し、孵卵温度の多様性を選択しているにも関わらず、人工孵化場に集約することにより、温熱環境が一定になることに関しては、性比の決定ステージが終了しした後に移植すればいいのではないか?
→性比決定ステージまで流失の危険性がないのなら、そもそも移植の必要はない。また、卵の移動にはリスクが付きまとうことを考慮しなければならない。
<意見>:ウミガメは何千万年~何億年と世代を重ねてきた。人間が放流会をすることなど全く問題もなく、時間が解決するのでこのような議論はそもそも必要ない。
<意見>:科学的な根拠を待っていていいのか?根拠が出てからでは手遅れになるのではないか。人間が知っている科学的知見は非常に微々たるもので、野生に手を加えるという考え方を改めなければならない。
<意見>:予防原則を越えることが必要。科学的な知見を見出せるように努力すべき。
おおよそこのような議論がなされたと記憶しています。
私は最後にまとめとして、浜松市のウミガメ放流会事業を例に、流失の危険性が少ない産卵巣全てを人工孵化場に入れる必要がそもそもなく、何事も「人間がやりすぎることが良くない(野生への過剰関与は避けなければならない)」としましたが、少なくとも保護という言葉でその種の「絶滅の手助け」を人が行ってしまうような本末転倒な事態は避けるべきではないでしょうか。
ウミガメが世代を重ねてきた時間は非常に長期であり、人が手を出しても時間が解決するのでそもそも放流会の是非の様な議論は必要ないのでは?という意見もありましたが、だからこそ人が過剰に”種”に対して手出しをする必要はなく、生息・繁殖場の保全に尽力するべきだと私は考えます。
また、当日、会場を貸していただいたラクダ書店のみなさま
ありがとうございました。
皆さん、本は今後もぜひラクダ書店でお買い求め下さいm(_ _)m
ビオカフェは専門家と市民が対等な立場で科学のことを議論する場です。コーヒーなどを飲みながら気軽に議論に参加してください。
と き: 5月21日(金) 18:30~21:00 (時間が変更になりました。ご注意下さい。)
ところ: らくだ書店(更新情報をチェックして下さい)
参加費: 無料
(講演者や保全活動へのカンパを受付けております。お家に眠っている小銭などにてご支援下さい)
講演者
矢部 隆(日本カメ自然誌研究会 代表/愛知学泉大 教授)
石原 孝(日本ウミガメ協議会/東京大学農学生命研究科博士課程)
今村和志(表浜ネットワーク/豊橋技術科学大学海岸工学・ウミガメ研究室博士課程)
<サイエンスカフェ運動について>
狂牛病が人に感染する可能性を認めながらイギリス科学委員会は「感染しない」の見解を発表しました。感染する可能性を認めるとイギリス社会への影響が大きすぎることから選択された政治的見解でした。このように科学者が科学の範疇の中で判断できない領域が激増しています。科学技術の肥大化が不可知領域あるいは不確実性領域にぶちあたっている結果です。アメリカの核物理学者アルヴィン・ワインバーグはこの領域のことをトランス科学領域と呼びました。彼は、「科学によって問うことはできるが、科学によって答えることのできない問題群からなる領域」と定義しているようです。実証科学と似非科学との間の領域であるということも出来ます。
ヒト狂牛病の発生でイギリス科学委員会見解は破綻しました。この事件が発端となって、イギリスをはじめとするヨーロッパ各国で、サイエンスショップあるいはサイエンスカフェ運動が開始されました。科学者が(愚かな、あるいは知識の欠落した)市民に科学のことを教えるという従来型の欠落モデルを捨てて、科学者と市民が対等の立場で科学の進め方について議論する場です。日本でも、大阪大学、北海道大学、名古屋市立大学、名古屋大学などで同じような試みが開始されています。
CBD市民ネット・生命流域部会では、生物多様性をテーマとしたサイエンスカフェを「ビオカフェ」と名づけて、COP10本番までの10ヶ月間に毎月1回程度のペースで行う計画です。
<主催:生物多様性条約市民ネットワーク(略称:CBD市民ネット)生命流域作業部会>
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